貸借対照表を作ろう
個人事業をするならば経理を知り貸借対照表くらいは作れるようにしましょう。現在ではインターネット上に無料で利用可能な経理ソフトが沢山あります。これに銀行口座の動きや毎日の現金の動きを入力していけば、自動で貸借対照表は出来てしまいます。
それなりの経理知識を必要としますが、小学生でも理解出来る程度の算数の世界です。是非とも事業を行う人はこれに慣れて何時でも財務状況をチェック出来るようにして欲しいと思います。
難 しいのは科目の取扱ですが、個人事業程度の規模であれば利用する科目は限定される筈です。沢山覚える必要はなく自分の事業で必要な物だけを覚えれば問題無 い筈です。その科目が負債に当たれば、扱いがマイナスの残高なので資産の科目とは扱いが逆になると覚えておけば良いでしょう。
経理では入出 金の伝票以外に振替伝票を使う必要があります。経理ソフトでも同様ですので覚えておく必要があるのです。例えば借入をして100万円手に入ったとします。 その場合入金伝票で科目を借入金として100万円を処理するのは間違いです。借入金を入金する事は意味不明な処理なのです。
振替伝票で左側に借入金で、右側に現金として処理するのが正解です。これで負債の残高である借入金が計上され、資本のである現金が増えるという処理になるのです。
逆に返済する時には金利を無視すれば左右を逆にします。現金から借入金の残高を減らしたという処理になります。振替伝票ではこうした科目の移動や複数の科目に分けて移動させる処理に利用します。
覚えてしまえば簡単な処理ですので是非とも自分で経理ソフトを利用してみる事をお勧めします。
目標の段階的設定
事業を行う上で中長期の経営計画が必要な事は説明しました。それでは実際にそれをどのようにするのかをご説明します。
まず、私がネッ トショップでTシャツの販売を開始するとしましょう。長期目標は自分の年収を500万円にする事です。しかし直ぐにそれを達成するのは無理がありますの で、これは10年後とします。では中期目標として3年以内に300万円にしたいとします。更に短期で100万円の収入を上げる事を目標にします。
で は、事業開始時に輸入したTシャツを商材にして利益率を60%としました。最初の目標が個人の収入が100万円になる事ですので、167万円以上の売上が 必要です。輸入にかかるコストやその他の経費を考えると200万円程の売上が必要だと予測します。と言うことは毎月167000円の売上が必要です。
と言う事は仕入れに毎月66800円かける事になります。1日平均5600円程度の売上が必要で商品の平均単価が3000円ならば2枚売る必要があります。こうして営業を開始して何とか目標がクリア出来たら次の段階に入ります。
扱う商品を増やして次の目標をクリアし、利益率の高い商品を投入してより利益を上げる工夫をします。更に集客のために広告を使う事や、話題作りの為の商品開発もあれば良いかもしれません。もちろん上手く行かなければ修正して対策しなくてはいけません。
目標には段階を設けて、その為に行うべき事を決め、更に小さな目標を決めて進めていく事になります。うまく達成出来なければ分析をして修正をし、目標に近づける努力をするのです。
二つの視点を両立させる
経営者には遠くを見通す長期の視点と足元を見る近場の視点が必要になります。特に個人事業主にはこの二つの視点を欠かす事が出来ません。
毎日の営業に追われ長期の視点を持てないとどのように経営していくのかの本質を欠いてしまう事になります。足元である毎日の営業は満足していてもそれが何時までも継続するとは限らないのです。
事業とはトライアンドエラーの繰り返しと言う事も出来ます。幸運にもほとんど失敗をしない人も居ますが、普通は失敗と修正の繰り返しとなります。その中から経験として経営と言う物を掴み成長していくのです。
失敗をしない人は恵まれていると思いがちですが、失敗を経験しないという事はある意味では不幸です。失敗に対処するという経験がなければ今後の失敗に打ちひしがれてしまうかもしれないのです。
人 間の予測は常に間違いを伴います。未来が見えている人が居ないのと同様に、事業の先に何があるのかを知る人は居ないのです。ですから事業は難しくもあり面 白くもあるのです。色々な想定をして未来を見据え、自分のイメージした事業をして行く事が出来れば、軌道修正する事も容易になります。
事業には軌道修正が必ず必要だという事に気付いている人は、注意深く事業の状況や社会の環境を分析して対応する事が出来ます。責任者は毎日の営業に責任を持ちますが、未来の事業にも責任があるのです。
この矛盾した視点を両立させる事が個人事業や小規模な事業での忘れてはいけない事なのです。
金銭感覚と財務諸表
個人事業をしていて財務諸表を見る能力が必要な事は説明しました。では、それを見て感じるものはあるのでしょうか。それが金銭感覚です。
例えば利益が上がっていないのに経費を使い過ぎているのであれば、経費を圧縮する必要があります。無駄な経費をかけていないか、仕入れは妥当な量で管理されているのか、全ては事業におけるバランス感覚です。
また、自分が売る物の価格は適正なのか、安くし過ぎて利益を減らしていないか、高くし過ぎてビジネスのチャンスを減らしていないか、何時でもこのような課題を持つ必要があるでしょう。
薄利多売が良いとされているデフレの時代でも、きちんと収益を上げ儲かっている事業は沢山あります。それがなぜ利益を生むのかを考える必要があるのです。
資本主義は競争原理ですが、過度な競争に手を出すと利益を減らして自転車操業となる可能性があります。気が付くと赤字では意味がありません。本来は調度良いバランスを保ち最大の利益を確保する方にしなくてはいけないのです。
そ の為に自分の事業に必要な事は何であるかを考えなくてはいけません。接客を丁寧にしてお客さんを満足させてリピーターを増やすのか、商品の質を上げて多少 の価格差があっても購入してもらえるのか、何処にも手に入らないような付加価値で勝負するのか、色々な方法があるでしょう。
薄利多売は大企業が大きく回して利益を取る手法ですから、個人事業には無理があります。上手くバランスととり、最大の利益を上げるヒントは事業の財務諸表と社会にあると思います。
税務知識
個人事業をしている人の多くは自分の事業の経理をしている筈ですが、税務知識まで覚えている人は少ないようです。税務は複雑で簡単に把握出来ないと考えてしまうようです。
し かし、それほど難しくはありません。決まったルールが複数あるので混乱してしまうだけなのです。どのルールが自分の事業に適用されるのかが分かり難いの で、難しく感じてしまうのです。殆どのは経費と売上に関する知識を持てば問題無いと思います。個人事業主が認められる経費と、メインの売上を明確にしてい れば良いのです。
所得には一時所得や雑所得に扱われる物もありますが、分からなければ税務署に聞けば良いのです。電話一本で簡単に教えてくれます。税務に関する事は税理士に聞く方が良いと思っている人が多いのですが、実は税務署に聞いても良いのです。もちろん無料で聞けます。
自 分が行なっている事業に関わる税務知識は持っていないと経費を認められずに税金が増えたり、修正申告になる場合があります。収入も全てが売上とはなりませ んので、仕分けしていく必要があります。もし知識がなくて分からなければ書籍に頼るのも良いでしょう。または、一気だけ税理士にお願いして何がどうなるの かを研究しても良いでしょう。
事業をしていれば税務は付きまといますから自分でやれるようにするのが重要です。人任せにしてしまうと意外な落とし穴にはまり、思わぬ出費が出てしまうかもしれません。自分の事業には全て自分が責任を持つ方が良いのです。
法人化への意気込み
個人事業をしているのならばいずれは法人化を目指しましょう。法人化をするメリットは色々ありますが、事業規模が大きくなると信用力が必要になりま す。個人事業と法人ではその信用にかなりの差がありますので、せっかくの事業を成長させて法人化する事を目指して欲しいのです。
確かに小規模のままで構わない事業もあるでしょうし、拡大路線を取らない事も選択肢の一つではあります。また身の丈にあった事業で満足する方も多いでしょう。それはそれで構わないのですが、法人化を想定して色々な事にケジメを付けるのは個人事業でも有益になるのです。
例えば法人は個人と違う法人格を持ちます。法人のお金を私的に利用すれば業務上横領となり株主に訴えられます。適当な帳簿を付けていると放漫経営として馬鹿にされるでしょう。借入が増え過ぎてしまうと債務超過となり首が回らなくなり破綻してしまいます。
つ まり、自分の個人事業を法人化する前提で管理するのは法人になってからでも役に立ちますし、自らを律するという意味ではとても有効な方法なのです。個人と 事業を分けて考える事や資金管理をしっかりする事、経営計画を立てて着実に進む事、全てが法人に通用する経営手法なのです。
個人事業である事に甘えて適当に経営をするよりも、いずれ法人になる事を目指して同じレベルで経営をして行く事が出来れば法人になっても苦労する事はないでしょう。
その為に目指すべき未来として法人化を考えて立ち向かって欲しいのです。
冷静な見極めと判断
個人事業をしていて事業の状況を冷静に判断出来る人は余り多くないでしょう。自分で立ち上げた事業には思い入れがあり頑張ってきた過去があり、冷静に見る事が出来ないのです。
しかし、これが原因で破綻している事業を無理やり延命させても殆どの場合は少しだけ結果が出るのが遅くなるに過ぎません。事業として破綻している時点で根本的に無理があるか、やり直す必要があるのです。
自分の事業だからこそ冷静に見極めをする必要があるのですが殆どの人は出来ないのです。まだ大丈夫だとか、頑張ればなんとかなる、と言う気持ちには裏付けがありません。裏付けがないのは既に分かっているからかもしれません。
事業をする上で自分と事業は一心同体ですが、一番厳しくて冷静な目を自分と事業に向ける必要があると思います。でなくては誰も決断や判断を下してくれる訳ではないのです。
事業はトライアンドエラーの繰り返しだと言いましたが、その事業自体が失敗だと感じたら素直に手を引く潔さも必要になるのです。ダラダラと思い入れだけで事業を続けて傷口だけを広げてしまうと復活するのがそれだけ厳しい道のりになってしまいます。
人は何度でもやり直せますが、傷が大きいと時間がかかります。頑張る事は大事ですが、結果の出ない頑張りには勝機は無いのです。
その事を忘れずに自分の事業を冷静に見る目を持ちましょう。そして何度でも挑戦する権利があるのですから、立ち上がれば良いのです。