足元ばかりを見て長期展望がない
個人事業で多くの人が陥る状況をご紹介します。まずは長期展望がないと言う事です。曖昧なこうなりたいという願いはあっても具体的な経営計画としても目標や分析を持たない個人事業主が大半ではないでしょうか。
毎日の営業には力を入れて頑張る事している人が多いのですが、何年も先を見据えて細かな対策を考えている人は多いとは言えません。
大きな企業の場合は役割分担でこれが自然に出来ます。経営者や役員達は中長期の目標と現状分析をして何が必要かを考え経営に集中します。現場の人間 はこなさなければいけない仕事に集中しますので経営の事は考えません。上からの支持に従い目標をクリアする為に頑張る事はあっても全体的な分析や計画とは 無関係です。
しかし、個人事業ではこれを一人でこなさなくてはいけません。毎日の営業はもちろん大事ですのでちゃんとしながら、先に目指す目標を考えてそれを達成する為の小さな目標を決めて進む必要があるのです。
つまり、営業と経営の両立をする必要があるのです。大抵の個人事業主は営業は得意としていますが経営には疎い人が多いのです。
しかし事業に経営は必須です。何処に向かうのかわからない船はたちまち挫傷してしまったり、嵐に巻き込まれたりするのです。常に遠くを見て進むべき道を確認しながら、確実に歩みを進めるのは並大抵の事ではありません。
しかし、これが出来る人は事業が拡大しやがて法人になり大企業になる可能性があるのです。
資金管理が甘くなる
個人事業をしていて陥りがちな罠には資金管理が甘くなってしまう事があげられます。毎日の売上管理が面倒で数日分をまとめて行ったり、酷いと決算期になるまでしない人もいます。
毎日やれば大した時間もかからないのですが、面倒がって先延ばしにしてしまうのです。これでは売上の推移や分析など出来る筈がありません。
経費に関しても同様で仕入先の営業マンに言われるまま在庫を増やしてしまい、不良在庫を抱えてもそれを把握せずに過ごしてしまいます。棚卸をして初めて在庫金額の大きさに驚いたりします。
こうした甘い資金管理を行うと現状の把握は皆無と言って良いでしょう。現状を知らずに事業を行う事は船頭の居ない船と同じです。何処に向かっているのか、何処に向かうべきなのかを考えずに事業をしていれば何が起きてもわからない事が多いのです。
それでも毎日の売上を見ているから大丈夫だと考えるかもしれません。小さな商店ならそのようなやり方でも通用するかもしれませんが、それが正しいあり方だとは言えないのです。
せめて事業をしているのですから、資金管理はしっかりと行い出来れば毎日経理ソフトに数字を入力して現状分析を行うべきです。決算で赤字が発覚するまで気付いていないのでは怠慢以外の何物でもありません。
自分の事業の損益分岐点も知らずに事業をしているのならば、勤め人として働いている方がよっぽど安定するでしょう。甘い資金管理で失敗してもその責任は自分にあります。その事を忘れてはならないのです。
公私の区別が無い
個人事業をしていて良くあるのは自分の財布と事業のお金を混ぜてしまう事です。しかし、これは事業というものを独立して考えていませんのでお勧め出来ません。個人事業主であっても事業と個人は区別するべきなのです。
事業とは公に行う事ですから、私的なお金と明確に分けてルールを作りやり取りをするべきです。そうした感覚がないと自分のお金なのか事業の売上なのかの区別が無くなり、酷い人は事業のお金を遊びに使ってしまう場合もあります。
後になって支払いのお金が足りずに困ってもどうしようもないのです。また個人の支払いを事業の経費として計上している人も居ます。税務上は認められ ないので税務調査等があれば指摘される筈ですが、そのような事がないのを良い事に長年これを繰り返してしまいます。いざ税務調査が入れば時効を除く分を脱 税したと見なされ重加算税を課される可能性もあるのです。
その場合は大きな金額になって洒落にならない可能性もあるのです。私の友人は長年自宅の衛星放送の料金を経費計上していました。私が決算時に手伝いに行った時にその点を指摘すると、今まで大丈夫だと言うのです。
しかし、彼はこうも言っていました。売上があるのに赤字になるのが不思議なんだ。つまり、彼は事業の収益が幾らあって幾ら経費を使っているのかを知りませんでした。そもそもその時点で不正な経費を計上出来る程の利益が無いのに、経費計上をしているのです。
全く意味不明の行為としか言えません。結局個人的な支払いを排除しても年間50万円の赤字でした。それすらも知らずに事業をしている時点でその適正にかなり問題があったのです。
財務状況についての無知
個人事業主に多いのが財務に関する知識不足です。決算書の読み方もわからない人は案外多いと思いますし、税務上の扱いに関しても知らない人も居ます。
全て経理担当者に任せているからとか、税理士に一任しているから大丈夫立と言う人が居ますが、責任転嫁以外の何物でもありません。自分の事業なのに自分の経営状況を見る方法すら知らないのでは何を基準に判断して経営をするのでしょうか。
経理の知識は、経営者は全て持つべきです。現状の分析が出来ない経営者は何を持って経営者と言えるのかが疑問だからです。数字に弱いとか簿記は面倒だとか言っている場合ではありません。少なくともお金は数字なのですから数字を拒否して事業をする事は出来ないのです。
事業をするという事は自分の事業に責任を持つことになります。財務状況を知らずに何の責任を取るのでしょうか。少なくとも事業の世界で責任といえばお金が発生する筈です。その時に財務状況を知らなかったと言って責任から逃れる事は出来ないのです。
簿記試験を受ける程の知識を持てとは言いませんが、せめて帳簿類を見て内容を把握出来る知識は必要でしょう。出来れば経理ソフトに入力出来る程度の知識もあった方が良いと思います。入力されたデータの間違いに気付かない経営者では意味が無いのです。
簿記では貸方や借方と言った概念がありますが、それを抜きにして自分なりに覚える事も出来ます。私は貸方借方ではなく、負債なのか資産なのか資本なのかだけで振替伝票を覚えました。それだけでも株式会社の決算を一人で行う事も出来るのです。
売上を利益と勘違いする
結構切羽詰まった事業をしている人に多いのですが、売上と利益の扱いが同じ人が居ます。本来売上とは事業に必要な経費に利益がプラスされている状況です。
事業を継続するのならば経費は必要なので、得られているのは利益だと考える必要があります。10万円の売上のうち利益として残るのは幾らなのかを考えてからでないと事業が立ち行かなくなります。
しかし、人から50万のお金を借りるのに来月売上が50万入ってくるから大丈夫だと言われると、そのうち利益は幾らなのかと問い正したくなります。借金でその50万を使ってしまえば経費を支払わずに消えてしまう事になります。つまり次の事業資金を消してしまう事にもなるのです。
また、水商売をしている人に多いのですが、売上金をそのまま持って遊びに行く人が居ます。原価率が安いのでダメージは無いと思っているのでしょうが、経理を経ていない利益の確定もしていないお金を遊びに使うのはどんぶり勘定の最たる物です。そんな事をしていては事業の本質が見えているとは思えません。
売上とは収入でありその収入から経費を支払い残ったぶんが利益になるのです。しかも経費には自分が取るべき給与も含まれています。その事を考えれば売上に簡単に手を付けたり、未来の売上をあてにして借金など簡単には出来ない筈なのです。
個人事業と言えども事業に変わりはありません。事業をうまく回せない人や状況を把握出来無い人が、事業を行うと多くの人が失敗をしてしまうのです。失敗をする為に事業を開始する人は誰も居ないのですが、これが現実なのです。