中長期の経営計画
個人事業をしていて借入れを必要だと感じた場合の注意点をご紹介します。まずは中長期目標を設定した経営計画の作成です。最初に長期目標を立てて、それを達成する為の中期目標を立てます。
そして具体的な課題を絞込み、一個づつクリアしていかなくてはいけません。事業ですから曖昧な目標ではありません。数字に置き換えて何がどうなるよ うにするのかを具体的に考える必要があります。その上で借入を利用してその資金がどのように効果を発揮して、どのように返済してくのかを考えなくてはいけ ないのです。
目標は必要ですが、常に状況が同じとは限りません。目標は適宜修正して状況に対応させる必要があります。仮に想定していない事態になった場合、想定 していないと言い訳をしても借入が消える事もなければ、事業が好転する訳でもないのです。事業の上で不測の事態が起きたとしても責任は全て代表者が負う必 要があるのです。
これは法人個人関係無く事業をする上では当たり前の事なのです。経営計画で想定していない事が起きた時には、軌道修正をして経営計画を練り直す必要がある場合もあります。常に遠くを見て、足元も見て確実に歩みを進めていく事が事業には求められるのです。
そして、計画には実行性が無くてはいけません。夢物語で事業が出来るのであれば誰も苦労などしないのです。経営計画には事業を舵取りする確実で冷静な視点を持たなくてはいけないのです。
その上で借入が最大限の効果を発揮するようにしなくてはいけないのです。
資金管理と返済計画
事業する上での資金管理とはお金の状況を管理する事です。毎日の売上や支払いを帳簿に記載して状況を把握する事はもちろん、使った経費の動向や売上の推移も把握しなくてはいけません。
売上は利益ではありませんから当然事業の粗利率を考えた上での利益を把握しておかなければ、日々いくら儲けているのかはわかりません。経費も1日辺り幾ら掛かるのか、月では幾らなのかを把握しておく必要もあるでしょう。
ある飲食店が月30万円のテナント料を払っているのであれば一日1万円のテナント料になります。その日売上が5万円で原価率が平均30%で 35000円が残ります。人件費がバイト代として1万円かかり残りは2万5千円です。水道光熱費や様々な経費の1日平均値を引いてやっと利益が出ました。 しかし自分の給与を考えていません。更に借入をしているのであれば1日辺りの元利と金利を考えなくてはいけません。
こうして計算して行き毎日利益が残るのか、日によって変わるのか、月トータルではどうなのか、これを把握するのが資金管理なのです。借入の返済が出来る程の利益に余裕がなければ借入の意味がありません。
お金が必要な事が借入の意味では無いのです。こうした数字の把握をしていれば幾らならば返済出来るのかも目処も立ちます。
無理のない期間で返済をする事も可能です。借入は一時しのぎで行うものではなく事業をする為にあるのですから、注意しておく必要があります。
少なくとも自分の事業の内容をこの様に把握して無ければ借入などは出来ない筈なのです。
自分のお金を事業に使う事
自分のお金を個人事業に使う事は悪い事ではありません。事業に関するすべての責任があるのですから仕方ないと言えるでしょう。問題なのは事業に何故お金が必要なのかを把握する事です。
事業開始時には何も始まっていないのですから自分のお金を使うのは当然としても、ある程度の期間が過ぎて事業資金がショートしたのならば、その原因を分析しておく必要があります。
売上が不振で思ったような利益が出てないのか、事業規模以上の経費を使ってしまっているのか、入金が遅れる決済手段を利用していてタイミングが悪い のか、そもそも資金管理が雑で事業のお金を個人で使ってしまっているのか、原因は様々あるでしょう。それを把握せずに自分のお金を事業に投入してしまう と、何が起きるのかを予測出来ません。
そもそも事業は振るわず破綻しているのならば、バイトでもして収入を上げる方が効率が良い筈です。経費を使い過ぎているならば売上や利益に対して使える経費を計算していない事になります。自分の事業を把握せずに経営しているのであれば根本的に見直しが必要なのです。
自分のお金を捨てる人はいませんが、事業が破綻しているならばそれはお金を捨てる事と同じなのです。支払先に迷惑を掛けたくないとか、人件費だけは 払っておきたいとか考えるのも重要ですが、早い段階で事業の失敗を見抜ければ周りの人もそんなに迷惑にはなりません。まして自分でも復活がしやすい筈で す。
しかし、日本人は真面目過ぎて人に迷惑をかける事を極端に嫌います。結果的に大きな迷惑をかける事になったり、自分が立ち直れないような債務を抱えてしまうとどうにもならなくなるでしょう。
自らの事業を冷静に知る事が出来れば、傷口はそれ程大きくはならないのです。
安易な借入をしない
事業をしていて資金が足りなくなり借入をすれば何とかなると考える人は多いでしょう。
しかしこれはある意味では間違っています。借入は返済する義務を負います。その返済を抱えて事業が思い通りに進むのかの分析がないままに借入をしてしまうと、借入れた資金で一時的には楽になりますが、ジリ貧になってしまう可能性が高いのです。
事業資金として借入をする場合は、多くの金融機関が決算申告書や事業状況の報告を要求します。ノンバンクも決算書の控え等は必ず要求するでしょう。それが面倒だと個人のキャッシングを利用して事業資金を借りる人がいます。
これはもうどうにもならない道をたどっていると思います。完全に一時しのぎの行為だからです。事業の検討や把握もせず借入をしてしまうのは返済計画も資金管理もない証拠です。そうした借入が事業を好転させる例を見た事がありません。
大抵は事業破綻と個人の債務整理に至るでしょう。借入とは個人でも事業でも未来の収入を先に利用しているのです。未来の収入が少ないままなら借入は出来ないのです。
そのような基本的な概念を無視して借入をしてしまうと、その結果は誰の目にも明らかです。簡単に借入が出来る事と事業がうまくいく事は根本的に全く違う世界の話です。
今月の支払いが乗り越えられたとしてもその先の展望は無いのです。自分の事業にマイナスの残高を持ち込む為には、相応の検討と分析をしなくてはいけないのです。
返済にあてる売上の意味
事業をしていて借入が出来たとします。売上はありその中から毎月返済をして行く必要がありますが、その内容を把握しておく必要があります。
例えば50%の利益率の商売で月の売上が100万円あります。借入の返済に50万円まで充てる事が出来ると考える人はいません。その他の経費が賄えないからです。
色々な経費を支払って借金返済前の利益が20万円残っているとしましょう。まだ自分の給与を引いていませんので、ここから幾らなら自分の取り分を減らして返済に充てる事が出来るのでしょうか。自分の実入りに直接影響すると考えれば難しい判断になると思います。
自分の生活を犠牲にしてまで早く完済してしまうのか、それとも生活を優先してある程度長期間の返済にするのか、判断は人によってわかれるでしょう。
ではここで借入をした事で売上の効率が上がり120万円になりました。60万円の原価と36万の経費を支払って24万円残ります。これなら自分の給与を20万取った上で4万円が返済に充てる事が出来ます。つまり、借入を起こしたら売上が上がるようにすれば殆ど影響が出ない事になります。
しかし、実は売上の中で20%しか利益が上がっていない事に注意して欲しいのです。この数字が変わらない限りは20万円の売上アップは利益にして4万円の増加にしかならないのです。
自分の事業の構造的な数字を把握していればこのような計算は瞬時に出来るでしょう。そして借入を返済する為にどんな事が必要なのかも理解している必要があるのです。